認知症予防効果が期待できる成分として「プラズマローゲン」が注目されています。ここでは、プラズマローゲンとは何かという基本的な情報から、どのように認知症への予防効果が期待できるのか、どのように摂取したら良いのかについて詳しく解説していきます。
(※この記事は医師監修の記事ではありません。)
アルツハイマー型認知症は、アミロイドβタンパク質が沈着することで脳が委縮し発症すると考えられていますが、プラズマローゲンは、このアミロイドβタンパク質の沈着を抑制することができる成分です。さらに、脳内炎症の指標となるミクログリア細胞の活性化も、プラズマローゲンによって抑制されます。
1995年、アルツハイマー型認知症の患者において脳細胞内でのプラズマローゲンの有意な減少を確認。2007年にはアルツハイマー型認知症患者の血液中のプラズマローゲンの低下が認められ、2012年には減少の程度と認知症重症度との相関性について報告されました。さらに、プラズマローゲンを補うことで言語記憶力と認知機能速度が向上したというヒト試験の結果も発表されており、こうした数々の研究結果から、プラズマローゲンを摂取・増やすことが認知症予防・対策として期待されるようになったのです。
プラズマローゲンは、細胞を構成する主要成分であるリン脂質の一種です。全身のリン脂質のおよそ18%がプラズマローゲンと考えられており、脳や心臓、腎臓などに多く存在しています。脳内のプラズマローゲンは年齢とともに減少するだけでなく、酸化ストレスや炎症、神経変性などが原因でも減少します。
プラズマローゲンの働きとしては、様々なものが挙げられます。
この中でも、ミエリンの形成促進・維持機能は脳を正常に働かせるために重要な作用です。ミエリンは脳の神経突起を取り囲み、絶縁体として働いています。ミエリンは神経伝達速度を向上させ、神経性新機能の調整も行っています。このミエリンの主要成分がプラズマローゲンなのです。
また、アミロイドβタンパク質の蓄積がアルツハイマー型認知症の原因として考えられていますが、このアミロイドβタンパク質の蓄積には神経炎症が関係しています。プラズマローゲンは神経炎症の抑制効果によってアミロイドβタンパク質の蓄積を抑制する働きももっています。
さらに、タンパクリン酸化酵素の活性化によって脳の栄養となるBDNFの産生を促し、神経細胞の修復・再生に寄与したり、神経細胞死を抑制したりする効果もあると考えられています。
プラズマローゲンはリン脂質の一種ですが、他のリン脂質と異なりビニルエーテル結合を持つ特殊な構造になっています。ビニルエーテル結合は酸素との反応性が高いため抗酸化作用を発揮し、酸化物から細胞を守ります。
プラズマローゲンの構造にはEPA、DHAなどの多価不飽和脂肪酸が含まれています。これらの成分は脳で合成することができないため、食事として摂取する必要があるのですが、プラズマローゲンなどリン脂質に結合したEPAやDHAは脳に取り込まれやすいという性質を持っています
なお、プラズマローゲンを体内で正常に合成できない場合はミエリンの形成異常や精神運動発達遅延、関節点状石灰化といった症状がある肢根型点状軟骨異形成症という病気を発症する可能性があります。
豚肉や牛肉と比較すると、鶏むね肉の方がより多くのプラズマローゲンが含まれています。世界で初めてプラズマローゲンの食品素材化に成功したのが、鶏むね肉プラズマローゲンです。
ホヤは鶏むね肉よりもEPAやDHAが豊富に含まれており、調達コストを抑えられるという特徴があります。
ホタテのプラズマローゲンはEPAやDHAも豊富に含まれており、アミノ酸も多く含まれているので疲労回復にも効果的です。また、ホタテに多く含まれているエタノールアミン型プラズマローゲンは、最もヒト型に近い構造をしていると言われています。
タコはプラズマローゲンに加えてビタミンEや亜鉛などのミネラルが多く含まれており、美肌効果やホルモンバランスを整える効果も期待できます。高タンパク質、低脂肪・低カロリーなのでダイエットを考えている方にもおすすめです。プリン体が多く含まれているため、尿酸値が高い方は注意しましょう。
鮭はプラズマローゲンの含有量としてはホタテやタコほど多くありませんが、抗酸化作用が強くEPAやDHAが豊富に含まれている食材です。また、低カロリーでタンパク質の吸収が良いという特徴もあります。
プラズマローゲンは日々の食事でも一応摂取することができますが、サプリメントを利用することで効率よく摂取できます。
プラズマローゲンは自然由来の物質であり、もともと体内で作られる物質であることから、副作用が見られず安心して試すことが出来ます。
ヒト試験では、3か月間毎日プラズマローゲンを摂取すると血液中のプラズマローゲン濃度が上がること、そしてプラズマローゲンを摂取しなかった人に比べて言語記憶力や認知機能速度が向上することが分かりました。
参照元:丸大食品企業情報サイト 「プラズマローゲンのはたらきをさぐる」
(http://www.marudai.jp/corporate/safety/project/plasmalogen/detail02.html)
ただし、1日あたり1㎎摂取した場合と100㎎摂取した場合で有意差が見られなかったことから、プラズマローゲンは大量に摂取すれば効果が上がるものではないようです。
リン脂質の一種であるプラズマローゲンは、認知症の原因とされているアミロイドβタンパク質の蓄積を抑制する働きがあることから、認知症予防・対策として期待されています。
また、プラズマローゲンには脳内炎症の抑制や学習記憶行動の低下抑制効果があり、プラズマローゲンを補うことで認知機能が改善することが分かっています。
プラズマローゲンは鶏むね肉やホタテ、ホヤなどに含まれていますが、サプリメントによって効率的に摂取することが可能です。日々の生活に上手に取り入れて、認知症予防・対策に役立ててみてはいかがでしょうか。
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