日本人になじみ深い、緑茶に多く含まれるカテキン(EGCg)。緑茶だけでなくウーロン茶など茶葉を使ったさまざまな飲料に含まれています。
とくに意識はしていないけれど、日常的にお茶から摂取している方も多いのではないでしょうか。
近年、カテキンは認知症の予防効果があるとして注目されており、さまざまな研究結果が報告されています。
カテキンは、茶葉に含まれるポリフェノールの一種であり、お茶の渋みや苦みの由来である成分です。
緑茶には主に「エピカテキン」「エピガロカテキン」「エピカテキンガレート」「エピガロカテキンガレート」の4種類のカテキンが含まれています。
認知症の原因の一つとして挙げられるのが、酸化ストレスです。そんな酸化ストレスをカテキンの持つ抗酸化作用は軽減してくれるため、カテキンの摂取で認知症を予防できる可能性があります。
また、酸化ストレスは認知症の発症につながる「脳血管障害」の原因にもなると言われています。カテキンの抗酸化作用は脳血管障害の予防となり、結果として認知症予防につながります。
カテキンはポリフェノールの一種です。ポリフェノールには抗炎症作用や血管を保護する作用があると言われています。脳に炎症が起こったり動脈硬化が進行して脳血管症を患ったりすると、認知症になるリスクが高くなります。したがって、これらの疾患を予防することは、認知症を予防することにもつながります。
数あるカテキンの中でも、とくに認知症予防において注目されている「エピガロカテキンガレート」は、お茶に含まれるカテキンの50~60%を占めています。
ここからは、エピガロカテキンガレートがもたらす効果について詳しく解説していきましょう。
アルツハイマー病や認知症になると、たんぱく質の分解酵素がうまく働かなくなり、アミロイドβというたんぱく質が蓄積して細胞にとって悪い働きを起こします。
このアミロイドβを分解してくれるのがカテキン。その中でも、エピガロカテキンガレートはアミロイドβの分解を助けるほか、アミロイドβが蓄積するのを抑える作用が確認されています。
カテキンを摂ることが認知症予防に効果があるとされているのは、アミロイドβの異常凝集や蓄積を防ぐことによるものと考えられています。
株式会社伊藤園による臨床試験では、カテキンを継続的に摂取することで、中高年者の作業記憶「ワーキングメモリー」が改善することが分かりました。
試験は、50~69歳の中高年者で、認知機能の自覚を低下している人を対象に行われました。
事前に認知機能を評価するテストを受けた対象者に対し、緑茶由来のカテキン抽出物(約336mg)を12週間続けて摂取してもらい、長時間にわたる注意力の持続を測定するテストと作業記憶を測定するテストを実施したところ、どちらのテストでも優位な現象が認められました。
一方で、プラセボを摂取させた試験者には、優位な現象は見られませんでした。
このことから、カテキンの継続的な摂取により、脳の作業記憶機能に好影響を及ぼした可能性が確認できます。
カテキンを多く含む緑茶をテーマにした観察研究でも、興味深い結果が確認されています。
現時点で認知症にかかっていない人を集めて、長期的に観察するという実験です。
一方で、緑茶の摂取状況を同時に調査して、認知症との関連を明らかにする横断的な研究も同時に行われました。
すると、認知症と診断された人のグループのうち、緑茶を飲んでいる人の数は、「認知症になっていない、緑茶を飲んでいる人よりも少ない」という結果が出ました。
逆に、「認知症と診断された、緑茶を飲んでいなかった人」は、「認知症にならず、緑茶も飲んでいなかった人」と比べると、割合が多いという結果になったのです。
さらに、1日の緑茶摂取量が多い人は、認知症と診断されたグループよりも、認知症にならなかったグループに分類される傾向にあり、反対に緑茶摂取量の少ないグループが、認知症と診断されたグループに属したことが確認されました。
この観察調査から、緑茶の摂取量のちがいや日常的な摂取習慣が、認知症の発生や予防に関係していることが考えられます。
参照元:朝日新聞デジタル「『緑茶で認知症予防』は本当か? 疑い深く見てみると」(https://www.asahi.com/articles/SDI201906242255.html)
伊藤園「カテキンの継続摂取で健常中高年者の『作業記憶』が改善することを確認」(https://www.itoen.co.jp/company/research/result/detail.php?id=25663)
認知機能検査を受けた人に緑茶をどのぐらいの頻度で飲むか質問したところ、緑茶を日常的に飲む人は、あまり飲まない人に比べて認知機能の低下が抑制される傾向にあることが分かりました。
「緑茶を週4~6杯、あるいは1日1杯飲む」人は、緑茶を飲む回数が週に3杯以下の人よりも認知障害のある割合が34%低く、「1日2杯以上飲む」人は53%低い結果となりました。
この結果から、カテキンによって認知機能の低下を防ぎたい場合には、緑茶にして1日2杯以上を飲むのが理想と言えるでしょう。
お茶として抽出した場合の緑茶カテキン(EGCG)の量は90~300mgで、緑茶を10杯飲んだ場合は1000~1500 mgに達するとされています。
一方、一般的に提供されている緑茶カテキンを含むサプリメントの1日あたりのEGCGは約5~1,000mgです。
また、900~2700mgと高用量のカテキンが含まれた緑茶飲料を、1週間・1ヶ月間・3ヶ月間と継続的に多めに摂取した試験でも、安全上は問題がないことが確認されています。
参照元:朝日新聞デジタル「緑茶認知症予防に効果」(https://www.asahi.com/edu/student/atama/TKY200808260178.html)
花王「茶カテキンの安全性」(https://www.kao.com/jp/nutrition/about-cat/cat09/)
茶カテキンには抗ウイルス作用が確認されていて、お茶でうがいをするとインフルエンザ予防に有効であるとされています。
また、最近では新型コロナウイルスに対しての有効性も期待されており、各機関で治療薬や予防薬などの研究が行なわれています。
今後、新型コロナウイルスに対して効果があると正式に認められれば、治療薬などの開発が活発に進められるかもしれません。
ヤマブシタケとは、認知症を防ぐ効果があるとされるヘリセノンという成分を含むキノコの一種。あの、ホクト株式会社が研究を進めている注目の食材です。その効果や研究結果などについてまとめていますので、こちらもぜひチェックしてみてください。
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