認知症は症状が顕著になる十数年も前から進行する病気です。
未来の自分や家族のために、毎日の食生活に取り入れられる認知症予防を解説します。
ホクト株式会社
ただ美味しいだけではない。キノコを通じて、健康で楽しい毎日を日本中に届けるため、自社の研究所で年間10,000株以上のキノコを栽培している、2020年12月現在日本で唯一のきのこ関連の東証一部上場企業。
とよだクリニック 豊田 早苗 医師
クリニック併設の認知症予防センターにて患者さんの治療に携わる傍ら、地域包括支援センターの認知症予防教室の指導、『認知症予防ハンドブック』『お医者さんがつくった脳トレで旅するシリーズ』など多数の書籍執筆の実績を持つ。
書籍参照元:とよだクリニック公式サイト(https://www.toyoda-clinic.info/senta-aisatu/)
毎日の食事から認知症予防をはじめる
認知症の予防対策として、近年の研究から「認知症になりにくい食事」が判明しつつあります。
食事は、今とこれからの自分を作る重要な要素。認知症予防によい食事と栄養素を取り入れて、より健康的な脳と体を目指しましょう。
炭水化物・デンプンなどの糖質を多く摂取すると、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が上昇。その血糖値を下げてバランスを取るために、インスリンというホルモンがすい臓から分泌されます。実はこのインスリンには、アルツハイマー型認知症の予防と深い関係があると言われています。
和食とは、日本ならではの伝統的な食文化。和食の基本は「一汁三菜」で、主食・汁物・副菜・漬物などでバランスよく構成されています。この一汁三菜を心がけるだけで、野菜・豆類・穀類・魚介類といった、さまざまな食材を摂取することができるのです。
地中海食とは、イタリア・ギリシャ・スペイン・トルコ・ギリシャなどで食べられている伝統的な料理。地中海食が認知症によいと言われている理由としては、血管の老化を防ぐ「抗酸化物質」と、血管や細胞膜のもととなる「不飽和脂肪酸」の摂取量が多いことが挙げられます。
認知症には、大きく分けて2つの原因があります。ひとつは、血管性認知症のキッカケとなる脳梗塞・脳出血などの脳血管障害。もうひとつは、アミロイドβやレビー小体といったタンパク質のゴミが脳に蓄積することだと研究が進んでいます。
ここでは、認知症予防によいとされる食品をピックアップ。それぞれに含まれる成分と、摂取量の目安などについてまとめました。
主な認知症対策成分
DHA・EPA、カルシウム、ビタミンB12、タウリン
2014年に行われたアメリカのピッツバーグ大学医学部による研究では、10年間にわたり、260名の参加者の魚を食べる頻度・調理法を調査。青魚を週に1回以上食べる人は、そうでない人に比べて認知機能を司る脳の灰白質の容積が14%大きかったという結果が発表されています。
主な認知症対策成分
イミダゾールジペプチド、メチオニン、ナイアシン、セレン
2014年に発表された東京大学/九州大学/国立精神・神経医療研究センター/日本ハム(株)中央研究所などの共同研究では、鶏肉に含まれるイミダゾールペプチドを高含有した試験食を、中高齢者に長期間摂取してもらった結果、摂取したグループの脳で、萎縮を抑制する効果が見られたとのことです。
主な認知症対策成分
ポリフェノール、リコピン、ビタミンC、ビタミンE、食物繊維
17,700人の高齢者を対象に6年間にわたって行われた香港中文大学の研究チームの調査によると、野菜を1日3サービング(3皿)以上食べる人は12%、果物を2サービング食べる人は14%も認知症リスクが低下することが分かりました。
主な認知症対策成分
サポニン、大豆レシチン、イソフラボン、大豆ペプチド、α-リノレン酸
国立研究開発法人の国立長寿医療研究センターでは、大豆製品の摂取量が60歳以上の人たちの認知症リスクにどう影響するか、男女別に10年間検証しました。女性では摂取量が多いほど認知症リスクが低下、男性には有意な関係性が見られませんでした。
主な認知症対策成分
エルゴチオネイン、食物繊維、ビタミン・ミネラル、レンチオニン・グアニル酸
ヘルシー食材の代表ともいえるキノコは、種類によって様々な成分が含まれています。例えば、シイタケ・マイタケ・エリンギなどに多く含まれているエルゴチオネインには、軽度認知障害(MCI)の発症リスクを下げるという研究があります。
主な認知症対策成分
オレイン酸、α-リノレン酸、ポリフェノール、パルミトレイン酸
ナッツ類に多く含まれる不飽和脂肪酸のひとつであるオメガ3系脂肪酸は、脳の神経細胞膜に含まれる成分で、記憶・認知・思考といった能力の維持に欠かせない存在です。これが不足すると脳機能もダウンし、認知症などのトラブルを引き起こすと言われています。
主な認知症対策成分
アントシアニン、エラグ酸、レスベラトロール、ペクチン、ケルセチン
海外で行われた70歳以上の女性1万6,000人を対象とした研究によると、ベリー類の摂取量が多い人はそうでない人に比べると、認知機能の低下が最大2.5年遅いことが分かりました。
主な認知症対策成分
カルシウム、マグネシウム、ビタミンB12、ホエータンパク質、ラクトフェリン
公益社団法人久山生活習慣病研究所と株式会社明治が共同で行った調査では、60歳以上の1,080名を対象に、牛乳・乳製品の摂取量を17年間にわたって記録。データを解析した結果、牛乳・乳製品を多く摂っている人はアルツハイマー型認知症の発症リスクが少ないことが分かりました。
主な認知症対策成分
カテキン、テアニン、サポニン、ビタミンC
シンガポール国立大学とエセックス大学・ケンブリッジ大学の共同研究によると、週に4回以上緑茶やウーロン茶を飲む習慣を持っている人は、加齢に伴う血管損傷・神経変性から脳が守られている可能性があるとされています。
主な認知症対策成分
レスベラトロール、ミリセチン、マグネシウム、カリウム
2016~2017年にかけて行われた、大阪大学の樺山舞助教授の研究では、76~86歳の高齢者1,217人の被験者に対して、飲酒習慣と認知機能を調べたところ、ワインを飲んでいる67人の被験者の認知機能が有意に高かったことが分かっています。
主な認知症対策成分
クロロゲン酸、カフェイン、ニコチン酸、NMP、トリゴネリン
コーヒーが持つ健康効果への研究は様々あります。例えば、フィンランドのクオピオ大学が21年にわたり1,409人を対象に行った調査では、1日にコーヒーを3~5杯飲んでいた中高年は、認知症を発症するリスクが60~65%低いことがわかりました。
主な認知症対策成分
オレオカンタール、オレイン酸、オレウロペイン、ビタミンE、クロロフィル、植物ステロール類
オレオカンタールは、上質なエキストラバージンオリーブオイルにしか含まれていないポリフェノールのひとつ。とある研究ではマウスにオレオカンタールを投与したところ、アミロイドβの分解に必要なタンパク質・酵素の生成が増加しました。
主な認知症対策成分
中鎖脂肪酸、ラウリン酸、ビタミンE
メアリー・T・ニューポート医師は、夫のスティーブ氏が若年性のアルツハイマー型認知症を発症した際に、その症状を抑制するためにココナッツオイルを食事に加えて3年にわたり提供。その結果、症状が改善し、病気の進行を食い止めることができたと発表しています。
主な認知症対策成分
フラボノイド、カリウム、コリン、活性型ビタミン
体内の常在菌が出すLPSという毒素が炎症を起こすことで脳細胞が死滅し、認知症のリスクを高めるという考え方があります。はちみつに含まれるいくつかのフラボノイドが、そのLPSの増加を防ぐと言われているのです。
主な認知症対策成分
フェルラ酸、γ(ガンマ)-オリザノール、イノシトール、食物繊維、ギャバ(GABA)
食品ごとの血糖上昇率を示す指標のGI値が低めな玄米や全粒粉。食後の血糖値が上がりにくく、インスリンの過剰分泌や血管へのダメージを抑えることができます。ちなみに精白米のGI値は84、玄米は56と、認知症と関係の深い糖尿病の予防に繋がります。
主な認知症対策成分
クルクミン
さまざまな料理に使用されるスパイスの中にも、認知症の予防に働きかけるとされているものがあります。例えばクルクミンは認知症に関連するアミロイドβタンパクの凝集を抑制する働きなどを持つとされています。
高い認知症予防効果があるとされ、ホクト株式会社が研究を進めているヤマブシタケ。このキノコに含まれる認知症予防によいとされる成分と、上手な摂取方法についてまとめています。
イチョウ葉エキスとは、青葉を乾燥させたイチョウの葉からアルコールで抽出される成分のことです。イチョウ葉エキスは日本・アメリカなどではサプリメントとして利用されていますが、オーストリアやドイツでは医薬品として取り扱われています。
プラズマローゲンとは、脳・心臓・骨格筋・マクロファージなどに多く含まれるリン脂質の一種です。プラズマローゲンは体全体のリン脂質の約18%を占めている物質であるため、脳機能にとって重要な働きを担っていると考えられます。
レシチンとは、大豆・卵・肉類などに含まれるリン脂質の総称。もともとはリン脂質の一種であるホスファチジルコリンの別名となっていましたが、現在ではホスファチジルコリンが10~20%含まれているリン脂質混合物のことをレシチンと呼んでいます。
フェルラ酸とは、植物の細胞壁などに含まれるポリフェノールの一種。フェルラ酸の含有量が多いのは、米・大麦・小麦といったイネ科の植物です。なかでも生成されていない玄米や全粒粉は、よりフェルラ酸の量が多いとされています。
ミツバチと大きな関連があるプロポリス。このプロポリスが認知症予防に効果があるのではないかと考えられ、さまざまな研究が行われています。
ホクト株式会社監修
ヤマブシタケとは、中国・北米・日本に分布しているササンゴハリタケ科サンゴハリタケ属の食用キノコの一種。大きさは直径5~10㎝ほどが一般的で、真っ白な針が垂れ下がったようなカサや柄のない球状です。触るとふわふわと柔らかく、見た目からは「キノコ」とは判別できないような、不思議な形をしています。
中国においてはいわゆる「不老長寿につながる食材」として、歴代皇帝が探し求めた珍味であり、400年も前から食されてきたキノコです。
そんなヤマブシタケの認知症予防に期待できる効果について、ホクト株式会社の研究員の方からお話を伺いました。
ホクト株式会社
薬学博士 森 光一郎さん
おいしいキノコで将来の健康を守る研究
2020年12月現在、日本で唯一のきのこ関連の東証一部上場企業であるホクト株式会社の薬学博士である森さん。年間1万株以上のきのこの育種・研究を行う、きのこ研究の中枢ともいえる「きのこ総合研究所開発研究課」で、きのこの健康効果を追及するスペシャリストです。
脳のニューロン(神経細胞)の働きを活発に
ヘリセノンには、脳のニューロン(神経細胞)が消失するのを防ぐ働きがあると考えられています。
ニューロンは脳内の神経伝達を行う細胞です。加齢と共にニューロンが減少することが、アルツハイマー型認知症の原因の1つと考えられています。
このニューロンの減少を防ぐのが、神経成長因子(NGF:Nerve Growth Factor)。ヤマブシタケの成分であるヘリセノンは、細胞の働きを活発にすることで神経成長因子の合成を促進すると考えられいます。その結果、神経成長因子の合成が促進され、ニューロンが消失するのを防ぐことができるといわれているのです。
当サイトの協賛である「ホクト株式会社」へお伺いし、様々な認知症予防に優れている食材があるなかで、なぜヤマブシタケに着目しているのか、ホクトの研究員である薬学博士の森光一郎さんにインタビューを行いました。
まずホクトのきのこ総合研究所とは、どのような施設なのでしょうか?
主にきのこの品種開発や野生種の人工栽培研究を行っています
主にきのこの品種開発、野生種の人工栽培研究を行っています。弊社の主力商品であるエリンギ・ブナシメジ・マイタケなどは、1つの種類で年間3000株くらい交配・研究をしており、すべてのきのこを合わせると毎年1万株以上です。
同時にきのこの健康効果の研究にも注力しています。毎年沢山の交配をして新たな品種を作り、その中から選別を行い、優良品種を確立させています。
まさに、きのこ研究の中枢なんです!
日本だけでなく、世界中を探しても、ここまできのこにこだわって研究している企業は、とっても珍しいんですよ。
ホクトさんが健康分野への研究をはじめた理由はありますか?
「みなさんが健康で長生きできる社会へ」という社会貢献の想いからです
弊社がきのこ事業を進める中で、国内外に美味しくて健康なきのこ文化を創造する企業への成長を目指すという方針になったことがきっかけです。
先代社長の水野正幸は、「みなさんが健康で長生きできる社会へ」という社会貢献の想いが強かったため、美味しさだけではなく、健康への研究が活性化されていきました。そのため、食材としてただ提供するだけでなく、きのこで健康もお届けするという企業を目指しています。
身体にいい食材を、毎日食べてもらいたい。
美味しいだけではなく。毎日食べる「食材」だからこそ、健康にいいきのこの生産を目指して、日々頑張っています。
ヤマブシタケに注目するきっかけはどのようなものでしたか?
神経細胞を守る細胞への効果が期待できたからです
ヤマブシタケは生薬として、中国では不老長寿の薬として扱われて、古来から書物に掲載されているものなのですが、認知機能に対する効果が発見されたのは比較的最近です。
きっかけは、静岡大農学部の河岸洋和教授がヘリセノンという成分をヤマブシタケから特定したことでした。ヘリセノンを脳のグリア細胞(神経細胞を守るように囲っている細胞)に入れると、神経細胞を活発化させる、細胞死を防ぐ、新しい神経細胞を生み出すなどの働きを持つNGFという物質が多く放出されたため「ヤマブシタケは認知症にいいのではないか」という論文です。
ちょうど弊社が本格的に健康分野へ取り組もうとしていたタイミングと合っていたため、ヤマブシタケを本気で研究してみようという方針が固まりました。
神経細胞に働きかける、ヤマブシタケの可能性。
なんとなく「身体にいい」と言われてきたヤマブシタケですが、やっとその働きの理由がわかってきたんです。
人への臨床実験の過程と、その結果を教えてください
ヤマブシタケ摂取による認知機能の改善は8週目から見られました
臨床実験は軽度認知障害(MCI)と呼ばれる段階の方にご協力いただきました。年齢は50~80歳、平均年齢は60.3歳です。プラセボ食摂取のグループと、ヤマブシタケを1日3gずつ摂取するグループに分かれて、16週間観察するという試験です。
結果として、ヤマブシタケ摂取のグループにのみ、簡易認知機能評価スコアの結果に改善傾向がみられました。平均値を出して解析すると、摂取期間中徐々にヤマブシタケ群は改善の兆しが見られ、統計的に有意な差がつくのは8週目でしたね。
続けることが認知症対策のカギ
ただ、臨床実験中の16週の後、ヤマブシタケの試験食の摂取をやめていただき、4週間の観察期間を設けました。結果として、摂取をやめると徐々に簡易認知機能評価スコアの結果が下がっています。やはり薬と違って、劇的な効果があるわけではありませんから、続けていくことで結果が出るのだと考えています。
人の認知機能への効果が実証された!
ヤマブシタケの軽度認知症の改善効果が、統計的な数値として差が出た、とても重要な実験なんです。
地域の認知症予防教室指導にも取り組む医師
当サイトの一部監修を依頼したのが、認知症予防について研究している、とよだクリニックの豊田早苗院長です。「病気を診るのではなく、人を見る」が診療理念で、多くの患者さんに心のこもったアドバイスを送っています。
介護士対象の講演会、地域包括支援センターの認知症予防教室指導など、認知症に関する書籍の執筆実績も多数。
さまざまな機関で認知症予防についての研究が進められていますが、現在のところ決定的な予防法は見つかっていません。だからと言って今行われているさまざまな予防対策に効果がないワケではありません。正しい知識を知り、前向きに取り組むようにしましょう。